我が娘に贈る記

テレビの普及により、ともすれば見る楽しみに終わる、浮き草の如き生活習慣に流

れがちな今日、それに飽き足らず、私はもっと人間の根源的な喜びや楽しみを求め

て漬物を漬け始めました。

 それには、作る楽しみや、知る喜び、食べる楽しみがあり、話題性に富み、自然の

摂理に触れ、野菜や山菜、海草と対話し、魚を挟み込んだりして、美味しく出来上

がった時には、親しい友人、知人に贈り、井戸端会議に自慢の花を咲かせています。

 「知るは楽しみなり、と申します、よくこれを知り、よくこれに従えば、人は憂ひ

を知らず。」とは鈴木健二さんの言葉ですが、世界の漬物を知ることは大変楽しい

物であります。

 三千年の昔から、人類の歴史と共に伝えられ、世界の民族の文化と共に、シルクロ

ードを通って日本に伝えられた漬物、それから千年、日本の家庭ではくぐくみ育て

られて、今日では数百種類にも及んでいます。壮大なロマンを頭にえがきながら、

食卓に一味添えて、美酒を前に、友と語る楽しさは、大変おつなものであります。

                               敬白

                               松井米蔵